2009年07月20日
スピルバーグ作品、究極の選択!
『スティーヴン・スピルバーグ監督作品で一番好きなのは?』と聞かれたら、ホントに困ってしまいます。
彼はどのジャンルの作品もクオリティ高く、子供から大人まで楽しめるエンターテイメントにしてしまう達人。
人種差別だって宇宙人だって戦争だって幽霊だって恐竜だって、彼の手にかかれば面白くならないハズがない!
その中でも特にこの2本は、傑作中の傑作。
しかし、やはりどちらか1つには絞れない。
2作とも、30年以上も前に作られたとは思えないほど、今観ても充分リアルに怖いです。
『激突!』('71・米)
平凡なサラリーマン、デヴィッドはハイウェイを南下中に道を阻まれた大型タンクローリーを強引に抜いてしまう。
車での旅ならよくある光景だが、この出来事がもとで、彼は終始タンクローリーに追われるハメになり、生命を脅かされるほどの恐怖を味わう事になる。
タンクローリーに乗っている犯人の顔は一切映さず、時折腕や後ろ姿をチラッと捉えるだけで、観客自身に犯人は一体何者なのかを想像させる事により、恐怖を増幅させる手法はお見事。
『ジョーズ』('75・米)
人喰い鮫と人間との死闘を描いた海洋パニック映画。原作は、ピーター・ベンチュリーのベストセラー小説。
真夏の海水浴場に突如現れた巨大人喰い鮫相手に、警察署長、漁師、海洋学者の3人が漁船で退治に向かうが、鮫の力はあまりにも強力だった・・・。
臨場感を喚起するこだわり抜いたカメラワーク、恐怖をあおる音楽、ともに素晴らしい出来。
私は海にも行かないし、車も運転できないという、どちらのパターンとも程遠い生活をしていましたが、今年になって甥っ子に誘われてン十年ぶりに潮干狩りに出掛け、車も人の運転でなら乗る事もあるので、やっぱり人ごとではないなぁ、と・・・。
さて、あなたならどちらの恐怖がお好みですか?
2009年06月25日
アンチヒーローの魅力☆
『勝手にしやがれ』('60・仏)
この作品で、これまでのフランス映画のイメージは完全に払拭されたと思います。
原案、フランソワ・トリュフォー。監督、ジャン・リュック・ゴダール。
手持ちカメラでの撮影、即興の演出、ドライな描写が新鮮で、その後のアメリカン・ニューシネマにも多大な影響を与えたヌーヴェルヴァーグの記念碑的傑作。
主人公ミシェル(ジャン・ポール・ベルモンド)の刹那的な生き様、アンチヒーロー像は、男性にとってかなり魅力的に映るのではないでしょうか?
6月25日、パリのシャンゼリゼ通りでNYヘラルドトリビューン誌を売るアメリカ人留学生パトリシア(ジーン・セバーグ)は、ミシェルと会う。
彼は車の常習窃盗犯で、マルセイユから警官の追跡を振り切って逃げてきていた。
二人は一晩過ごした後、ミシェルは彼女をイタリア旅行に誘うが、翌日、彼女は警察に密告してしまう。
ラスト、警察の発砲に倒れ、『最低だ』とつぶやいてタバコをふかし、自身の手で瞼を閉じて死んでいくミシェルは、この上なくカッコいい!!
そして、『“最低”って、何の事?』とつぶやくパトリシア。彼女は彼を愛しているのになぜ密告したのか?愛しているからこそ?それとも彼の愛を確かめたかったのか・・・?
原題の『A Bout De Souffle』(日本語で『くたばっちまえ!』的な意味)という言葉に、こんな素敵な邦題をつけたのもスゴい!
この映画で、若きベルモンドの男臭さ、そしてゴダールの世界を満喫してはいかがでしょうか?

自由で束縛のない愛を愉しむ二人だが・・・。
2009年06月24日
レディの登竜門♪
『舞踏会の手帖』('37・仏)
6月・・・上流階級の若き乙女たちが社交界へのデビューを飾る時期。
この映画の主人公(マリー・ベル)も、白いロングドレスに身を包み、16歳で舞踏会に出席する。
あの華やかな一夜から20年後―。
36歳の若さで未亡人となった彼女は、昔の手帖を頼りにかつての踊り相手の男性たちを訪ねてゆく。
当時、彼女にフラれた男性たちは、ルックスも職業も性格もみなバラバラ。
共通しているのは、未来を嘱望されたはずの彼らが、今では堕落した人生を送っているという事実。
弁護士だった男性はギャングに転身し、作家志望の男性は山岳ガイドに。政治家を目指した男性は、町長におさまり野心を棄てた・・・。この他に、もぐりの堕胎医や宗教家、美容師などが彼女に再会し、昔を懐かしむ姿が切なく映る。
監督は、ジュリアン・デュヴィヴィエ。彼の作品にしては珍しくロマンティシズム溢れるオムニバス映画です。
役者も、ルイ・ジューヴェやフランソワーズ・ロゼエ、ピエール・ブランシャールと大御所揃い。
テーマ曲『灰色のワルツ』は、譜面を逆から演奏していき、さらにそれを逆再生したものが使われているそうです。
デビュタントに憧れる女性はもちろんですが・・・『昔はよかった~』と思わず口に出してしまうようになった方にこそオススメしたい、哀愁漂う一本です。
2009年06月21日
サラリーマンの“虎の巻”!?
『努力しないで出世する方法』('64・米)
大ヒット舞台劇の映画化で、いかにもM・G・Mらしい、明るく快活なミュージカル。
高層ビルの窓拭き清掃員、フィンチは、通りのブックスタンドで『努力しないで出世する方法』という本を手に取る。そこには、失敗しない会社選びから実力なしにトップへ昇りつめる方法が網羅されていた。
早速、彼は本に則って実行開始!
しかし、次第に大事なものを見失い、出世の鬼と化した彼の行く先には、本には書かれていない数々の難関が待ち受けていた・・・。
簡単に先が読めてしまう展開はちょっぴり残念ですが、ストーリーを導くための歌や踊り(オフィスの小道具片手にサラリーマンやOLたちが踊る姿が楽しい)や、女性の60年代ファッション(ブルーやイエロー、オレンジ等の鮮やかなオフィスファッションや、カラーonカラーな着こなしがとてもカワイイ)は、観ていて飽きさせません。
文字通り、“努力しないで出世したい方”、オススメです(笑)。
2009年06月02日
ジューン・ブライドの季節です
『ジャスト・マリッジ』('03・米)
6月といえば、“ジューン・ブライド”。
その昔、“成田離婚”なんて言葉がありましたが、この映画はそんなテーマを含んでいて、それでいて楽しい。
作品のキャッチコピーが、『Q.問題です。この二人の笑顔は、あと何秒続くでしょう?』なんてパッケージに書かれているぐらいだから、これから一体何が起こるのやら!?観る前から期待が高まります。
上流階級の超お嬢様のサラと、ラジオのリポーターとして働く庶民派のトムは、熱烈な大恋愛の末、周囲の猛反対を押し切って結婚。
ところが、ハネムーン先で数々のトラブルに見舞われ、二人の仲は一気に険悪ムードに。
飛行機の搭乗時からすでに波乱含み。滞在先のヨーロッパでも不運は続き、さらに二人の仲を壊そうと、新婦の家族が最強の刺客まで送り込んでくる始末。
何と言っても、主演の二人のお笑い合戦が一番の見所。
新郎役のアシュトン・カッチャー(実生活ではデミ・ムーアの旦那さんです)もいいけど、やはりここは新婦役のブリタニー・マーフィに軍配を上げたい。
前出の『クルーレス』の頃に比べ、美しく磨かれたルックスもさることながら、彼女のコメディエンヌぶりはハリウッド随一です。
婚カツの参考になるかはさておき・・・こんな笑えるウェディングムービーで、日本の6月のジメジメした空気を吹き飛ばしてみてはいかがでしょうか?

2009年06月01日
ガールズムービーの火付け役
『メリーに首ったけ』や『キューティー・ブロンド』等、今でこそオシャレなガールズムービーは量産されているけれど、それはこの映画がブームの火付け役だったんじゃないかと思います。
『クルーレス』('95・米)
※『クルーレス』とは、“無知”とか“ダサい事”の意。
ビバリーヒルズに住むお嬢様、シェール(アリシア・シルヴァーストーン)は、弁護士のパパとリッチな豪邸に二人暮らし。
オシャレでキュートでハイスクールの人気者である彼女は、親友のディオンヌ(ステイシー・ダッシュ)と買い物をしたり食べ放題に行ったり、エステでリラックスしたりする毎日を送っている。
毎朝起きると、まず最初にするのが洋服選び。それも自分のワードローブをすべてパソコンに取り込んであって、自分の写真に着せ替えてチェックするという徹底ぶり(コーディネートがイマイチだと『ミスマッチ!』なんて警告までしてくれる。こんなソフト、私も欲しい!)。
しかし、そんな生産性のない暮らしに飽き飽きしていた彼女は、クラスにドラッグ漬けのイケてない転校生(ブリタニー・マーフィ)がやってきたのを機に、『人を幸せにする事』に生き甲斐を見出してゆく。転校生をオシャレに変身させた後は、老いぼれの担任教師と奥手な女性教師をくっつけて、おまけに自分の成績まで上げてしまうというやり手ぶり。
もちろん、恋愛あり、パーティーあり、イイ女でいるための秘訣や男の子にモテる必勝テクまで教えてくれます。
90年代半ばの作品なので、ファッション面での古さは否めないけど、内容は今も全然色褪せてない。
平凡な日常にウンザリしているけど、自分探しの旅に出る程の余裕がない方に、オススメの1本。
今いる場所で、本当の自分を見つける方法が、ここにあります。
2009年05月31日
世界禁煙デーにちなんで!?

『ストレンジャー・ザン・パラダイス』、『デッドマン』のジム・ジャームッシュ監督が、煙草とコーヒーをテーマに18年間撮り続けたフィルムを、11のシークエンスからなる1本の映画にしました。
演じる役者たちも、大御所からひとクセもふたクセもある怪優、ミュージシャンまで多彩。
①『変な出会い』・・・『ライフ・イズ・ビューティフル』のロベルト・ベニーニ、スティーヴン・ライト出演。
②『双子』・・・ジョイ&サンキ・リー(ジョイはスパイク・リー監督の妹、サンキは弟)、スティーヴ・ブシェミ出演。
③『カリフォルニアのどこかで』・・・イギー・ポップ、トム・ウェイツ出演。カンヌ映画祭短編部門パルム・ドール賞受賞作品。
④『それは命取り』・・・ジョー・リガノ、ヴィニー・ヴェラ、ヴィニー・ヴェラJr.出演。ここではダイエット中の男性が昼食代わりにコーヒーと煙草を注文。
⑤『ルネ』・・・“謎の女性”ルネ・フレンチ、E.J.ロドリゲス出演。
⑥『問題なし』・・・アレックス・デスカス、イサック・デ・バンコレ出演。
⑦『いとこ同士』・・・ケイト・ブランシェット主演。1人2役をこなしています。対照的な役柄、まるで別人!
⑧『ジャック、メグにテスラコイルを見せる』・・・“ザ・ホワイト・ストライプス”の姉弟デュオ、メグ・ホワイト、ジャック・ホワイト出演。
⑨『いとこ同士?』・・・アルフレッド・モリーナ、スティーヴ・クーガン出演。英国俳優なので、ここではコーヒーではなく、紅茶が登場。
⑩『幻覚』・・・ビル・マーレイが本人役で登場。なのにナゼか役柄はカフェのウェイター。
⑪『シャンパン』・・・ビル・ライス、テイラー・ミード出演。まずいコーヒーをシャンパンに見立て、人生を祝う。
煙草とコーヒー・・・この小道具だけでこんなにたくさんのドラマが生まれるなんて。
モノクロ映像もとてもオシャレで、小粋な会話と魅力的な音楽に包まれて、飲む人も飲まない人も、吸う人も吸わない人も肩の力を抜いて楽しめます。
今日は、“世界禁煙デー”。
それに反発するワケではないけれど、敢えてこんな映画でリラックスしてみるのはいかがでしょうか?

煙草にコーヒー。人それぞれ楽しみ方があるように、人生もいろいろ。
2009年05月25日
オリジナルの輝きよ・・・
『オーシャンと11人の仲間』(’60・米)
昔から、登場人物のキャラが立ってるお話が大好きです。
風貌も育ちも性格も違う者たちが、それぞれ独自の特技を活かして活躍する物語は、“三人寄れば文殊の知恵”的勇気をくれるし、思わず時間を忘れて楽しんでしまいます。
『オーシャンと11人の仲間』は、2001年に原題のまま『オーシャンズ11』として、スティーヴン・ソダーバーグ監督でリメイクされた映画のオリジナル版。
大晦日の午前零時きっかりに、ラスベガスのカジノから大金を奪う計画を立てるオーシャンと、その話に乗ってきた彼の元戦友11人の大胆不敵な強盗劇。
全編、粋な笑いとスリルに満ちていて、あっという間の130分!
キャストの豪華さやスピード感溢れる展開はリメイク版にやや劣るものの、面白さは決して引けを取りません。
おまけに『シナトラ・ファミリー』の一員であるディーン・マーチン、サミー・デイヴィスJr.の素晴らしい歌声まで聴けて、全体的に渋くて大人な趣きがなんともオシャレなので、私は断然オリジナル派!
リメイク版の方が少々話が複雑ですが、おおまかなストーリーはどちらもほぼ同じ。
でも大きく違うのがラストのオチ。
だからオリジナル版は続編ナシ、なのです。
・・・ここまで書いちゃったらネタバレになってそうですが
リメイクされるはるか昔に観たのに、こちらの方が強く印象に残っています。
『オーシャンズ11』観た方には、是非見比べていただきたい。
どちらも未見の方は・・・まずはこちらからどうぞ。

2009年05月23日
彼らに明日はなかった・・・
『俺たちに明日はない』(67・米)
大恐慌の30年代。テキサス州ダラスを中心に、次々と銀行を襲った実在する強盗カップル、ボニー・パーカーとクライド・バロウの犯罪逃避行を描いたアメリカン・ニューシネマの先駆的作品です。
当時では斬新すぎるシナリオ、過激な描写、魅力的な俳優陣と、傑作と呼ばれる理由が随所に見られる、私の大好きな1本。
ニューシネマにしては珍しく、女性が主役の扱いで描かれている点も気に入っています。
ボニー役のフェイ・ダナウェイは、美人ではないけれど、気だるい雰囲気と妖しい魅力を持つ女優さんです。30年代のファッションもとっても素敵で、タイトなスカートにベレー帽、スカーフ使いなんかは現代でもマネしたいお手本スタイルです。
もうよく知られているように、『死のバレエ』と呼ばれたラストシーン。
それが1934年の今日。
ついに二人は警官隊に包囲され、87発の弾丸を浴び、車も体も蜂の巣にされてしまいます。それをスローモーションで見せる衝撃映像。
タイトル通り、彼らに明日(5月24日)はなかったのでした。

【実物のボニー&クライド(左)と、映画のワンシーン(右)】
2009年05月16日
私が映画好きになったきっかけ
『告発』('94・米)
極貧生活で飢えに苦しみ、幼い妹のために店のレジからたった5ドルを盗んだ罪で、25年の刑を宣告されたヘンリー・ヤング。
しかも収容されたのは、アル・カポネやベビーフェイス・ネルソンなど、重犯罪者が多い事で知られるアルカトラズ連邦刑務所。
ある日、ヘンリーは仲間とともに脱獄を図るが見事失敗に終わる。仲間の裏切りによって、独房に1000日も監禁された彼は精神を病み、食堂で顔を合わせた脱獄仲間を見つけると、思わずスプーンで喉を刺し、殺害してしまう。
囚人による囚人の殺害。第一級殺人の罪で告訴された彼の弁護を引き受けたのは、若き弁護士ジェームズ。初めは野球の話にしか関心を示さないヘンリーに辟易するが、次第に彼の純真な心に胸を打たれ、この勝ち目のない裁判を勝利へと導こうとするが・・・。
この事件がきっかけで、囚人への非人道的扱いや虐待などが明るみになり、ついに1963年、アルカトラズは閉鎖に追い込まれます。実話を“ベースにした”映画なのに、ヘンリー・ヤング裁判についての記載は、その後調べてもどこにも見当たりませんでした。FBIの汚点として、もみ消されちゃったのでしょうか?
これまで調べた中で、最も詳細な記載はこちら
残忍な副所長役を演じたゲイリー・オールドマン、怖すぎます!現在では悪役のイメージが定着してしまって、私なんか彼が映画に出る度、『犯人役かな?それじゃなきゃキーパーソンだな』と、観る前から勝手に決めつけてしまう程。特に男性からの人気が高く、いつも強烈な存在感を放つ、演技派俳優です。
実は、この映画で共演したケヴィン・ベーコンと、善悪の役柄がスイッチした作品もあります。

『灰色の容疑者』('88・米)
※原題は、“Criminal Law”。
興味ある方は、見比べてみるのも面白いかも。二人の芸達者ぶりがよく分かります。
2009年05月15日
続・『卒業』!?
ダスティン・ホフマン主演の名作『卒業』には、実は続編があった!?
主人公が花嫁を教会から連れ出すあの有名なラスト・シーン。
その後、二人はどうなったのか・・・???
それを描いたのが、ジェニファー・アニストン主演のラブコメディ、『迷い婚~全ての迷える女性たちへ~』('05・米)。
『駆け落ちまでしたものの、やはりうまくいかなかったのでは?』
『いやいや、あれだけドラマティックな二人だもの。きっと子供もできて、幸せに暮らしているはず・・・』
観る前からあれこれ想像してワクワクしていた私ですが、ストーリーかなり複雑です

当然フィクションでしょうが、こんなのアリ!?ってもうビックリな展開!もちろん、あの“ミセス・ロビンソン”も登場しますよ。
思えば、アメリカでは『卒業』はコメディ映画に分類されるそうで、この感覚は日本人の私にはピンとこないのですが、なるほど、だから続編はこんなに笑えるラブコメなのか。←ココだけ納得。
それにしても、ジェニファー・アニストンのコメディは、どれも面白い。
新作『マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと』への出演を決めた理由を、『男女が恋に落ちるだけのコメディには飽き飽きしていたから』と語っていた彼女だけど、やっぱり彼女の魅力はラブコメでこそ発揮されると思うのです。
これからもあのバツグンのプロポーションと豊かな表情を生かし、肩の力を抜いた演技で観客を楽しませて欲しいと願って止みません。
とてもロマンチックな結末。
その後、この二人に何が起こった!?
2009年05月13日
短いめぐり合わせ
『逢いびき』('45・英)
デヴィッド・リーン監督作品というと、『アラビアのロレンス』や『戦場にかける橋』、『ドクトル・ジバゴ』等の歴史大作を思い浮かべる人が多いと思いますが、一方で、『旅情』や『ライアンの娘』、『逢いびき』等の恋愛ドラマもとても素晴らしく、格調高い仕上がりになっています。
『逢いびき』は、平凡な日常に暮らす人妻ローラと、医師アレックスとの禁断の恋を描いたメロドラマ。
原作は、ノエル・カワードの戯曲『Still Life(動かない生活)』。名カメラマン、ロバート・クラスカーの陰影際立つ撮影に、音楽はラフマニノフの傑作『ピアノ協奏曲第2番』。全編、これ1曲だけで通しています。
主婦のローラは毎週木曜日、近所のミルフォードの町へと買い物に出かけます。帰りがけに駅構内のカフェでひと休みしていると、そこへ医師のアレックスが入って来る。その出会いがもとで、二人は毎週短い逢瀬を重ねていく。映画を観たり、食事をしたり、散歩をしたり。互いに家庭があり、これまでずっと家族に対して何の不満もなかった二人の生活に、ほんの一瞬小波が立つ。徐々に気持ちの昂ぶりを隠せなくなっていく二人。だが、ささやかな幸せは、長くは続かなかった・・・。
ローラ役のシリア・ジョンスンと、アレックス役のトレヴァー・ハワードは、どちらも地味ながら品のある役者さんで、このイイ意味での“地味さ”が、物語をリアルな感じに仕上げてくれていると思います。
リーン監督の大作は、臨場感が売りですが、このようなメロドラマも、なんだか現実に存在する恋人たちの日常を覗き見たような気持ちになる“臨場感”を与えてくれている気がします。
2009年05月09日
チャップリン5連発!
往年のコメディアンの中で、私の一番お気に入りはバスター・キートン。次にマルクスブラザーズ、ハロルド・ロイド、そしてダニー・ケイと続きます。
だけどチャップリンだけは・・・実はずっと食わず嫌いな感じで今日まできてしまいました。
監督・主演・脚本・音楽すべて手がけ、笑いの才能のみならず、歌やダンスまで披露してしまう天才なのに、子供の頃、『黄金狂時代』と『モダン・タイムス』を観て、幼心に『このおじちゃん、なんだか怖い』と強烈に印象に残り、しばし悪夢に登場する程のインパクトだったために、それきり私の中で封印したままでした。
実際、チャップリンのユーモアセンスは、10歳満たない子供が理解するには早すぎると、かの淀川先生もおっしゃってたので、そのままのらりくらりと過ごし、チャップリン観ずして映画好きを公言するという、なんともタブーな映画道をひた走ってきちゃいました。
ところが先月、ケーブルテレビでチャップリンの作品が連続放送されるという知らせが。私ももう大人だし(!?)、これを期にチャップリンの封印を解く決意を固めました。
今回のラインナップは、チャップリン作品の王道中の王道であるこの5本。
『キッド』('21・米)
男に捨てられ未婚の母となった女性が、泣く泣く生まれたばかりの赤ん坊を高級車に置き去りにする。そこへ様々なトラブルが発生し、赤ん坊を拾うことになる浮浪者チャーリーと、キッドと名づけられたその子との親子愛を描いた感動作。
『チャップリンの黄金狂時代』('25・米)
ゴールドラッシュに沸くアラスカを舞台に、一攫千金を夢見る放浪者チャーリーの恋と希望に満ちた物語。
飢えに苦しむチャーリーが、履いてた靴をボイルして美味しそうに食べるシーンはあまりにも有名。
『サーカス』('28・米)
ひょうんな事からサーカス団に紛れ込んだ浮浪者チャーリーが、曲馬乗りの少女に恋をしたり、災難に巻き込まれて綱渡りをするハメになったりと、終始ハチャメチャなシーン満載のドタバタ喜劇。
『モダン・タイムス』('36・米)
機械化された現代社会を風刺したコメディ。サイレントにこだわり続けたチャップリンが、この映画では歌声を初披露。
皮肉に満ちたユーモアだらけだが、最終的には人々を幸せな気分にさせてくれるさわやかなラストシーンも素晴らしい。
『街の灯』('39・米)
盲目の花売り娘との恋、自殺願望の富豪との交友を通じて繰り広げられるロマンティック・コメディ。『キッド』同様、笑って泣ける感動作。印象深い音楽もいい。個人的に一番好きな作品。
2009年05月08日
灰とダイヤモンド
『灰とダイヤモンド』('58・ポーランド)
ポーランドの巨匠、アンジェイ・ワイダ監督の代表作で、ポーランドの反独闘争をテーマにした作品です。
監督自身も第二次大戦時にレジスタンス運動に参加していたというだけあって、鋭い描写、鮮やかな演出で、緊迫した暗殺シーンも目が離せません。
また、逆さに吊るされたキリスト像、祝賀会シーンで流れるショパンのポロネーズ、解放を祝う花火、主人公のトレードマークである黒いサングラス等、象徴的な小道具も効果的。
1945年5月、ドイツ軍降伏。反ソ化するポーランドの地方都市。
反ソ派テロリスト、マチェックは、仲間と共に自動小銃片手に教会の前で暗殺相手を待ち伏せていた。
かつては反独組織に属していた彼らやメンバーたちも、今ではいくつかのグループに分裂、戦後の権力抗争を繰り広げていた。
誤殺、対立、裏切り―。
暗殺稼業に疲れ果てた彼の前に現れた一人の女性の存在によって、彼の決断は鈍ってゆく・・・。

ポーランド映画の傑作に次々と出演し、今後の活躍が期待されていましたが、残念なことに1967年、39歳という若さでこの世を去ってしまいます。
走っている列車に飛び乗ろうとして転落死という、映画のワンシーンさながらにショッキングな最期でした。
※黒サングラスが印象的なズビグニエフ・チブルスキー(左)と、恋人役の美人女優エバ・グジジェフスカヤ(右)→
2009年01月02日
ヒッチコック5連発!


本年もよろしくお願い致します!
なんと今年は、ケーブルテレビでヒッチコックのアメリカ時代の作品が5作も放映

年明け早々、テレビ三昧のお正月です

しかも、吹き替え。
こりゃ珍しい!と、思わず全部録画してしまいました。
これから耐久レースに入りま~す

①『パラダイン夫人の恋』(1947)
グレゴリー・ペック、アリダ・ヴァリ主演の法廷サスペンス。
2大スター共演であるにもかかわらず、タイトルすら聞いた事ありませんでした

ヒッチコックにしては珍しく、謎解きよりも心理描写に重きを置いている異色作。

②『白い恐怖』(1945)
イングリッド・バーグマン、グレゴリー・ペック主演のラブ・サスペンス。
奥手な精神科女医と、若き医学博士の恋に絡む殺人事件。
シュールレアリスムを代表する画家、サルバドール・ダリによる夢のシーンも見所の一つ。

③『ロープ』(1948)
ヒッチコック初のカラー作品。
ニューヨークのアパートメントを舞台に、二人の大学生が、自分たちの優秀さを証明するために殺人を犯す。探偵に扮したジェームズ・スチュアートと、学生二人との対決が見もの。

④『汚名』(1946)
イングリッド・バーグマン、ケーリー・グラント主演。
ナチスのスパイとして有罪判決を受けた父の汚名を晴らそうとする女性と、ナチス党の動きを追うFBI捜査官との恋愛を軸に描かれる、メロドラマ仕立てのサスペンス。

⑤『見知らぬ乗客』(1951)
「太陽がいっぱい」の女流作家、パトリシア・ハイスミス原作。脚色はハードボイルド作家のレイモンド・チャンドラー。
妻の浮気に嫌気がさしている主人公が、列車に乗り合わせた見知らぬ乗客から、“交換殺人”を持ちかけられる・・・。
2008年12月16日
スゴいぞ!日本の医療☆

実に20年ぶり!
きっかけは、私の通うバレエ教室の生徒さんが歯科助手の仕事をしていて、定期的なクリーニングを勧めてくれた事と、 最近になって冷たい物がしみるようになってきた事。
以来、知覚過敏治療の為、毎週欠かさず通院しています。
子供の頃、歯列矯正で辛い経験をした私は、歯医者が大の苦手

久しぶりに通院した日、治療台の上でつい、昔観た映画を思い出してしまいました→
『マラソンマン』('76・米)
ダスティン・ホフマン主演のサスペンス。
大学生で長距離ランナーの主人公が、ダイヤ密輸事件に巻き込まれて、元ナチス戦犯に捕らえられてしまい、『麻酔なしで歯をドリルで削られる』という、なんとも痛~い拷問を受ける怖~いお話

初めて観た時、あまりの衝撃に怖くて怖くて夜眠れなかった記憶が蘇る・・・。
こんな時に限って、ナゼこんな事思い出しちゃうんだろ、私


怖くて目を閉じると、この映像が出てきちゃう(笑)→
このシーン、今でも鮮明に憶えています。
・・・ところが、現在の歯科医療の技術はスゴかった!
『麻酔のための麻酔』なんてのがあって、しかもバナナ味

進化した技術、優しい先生のおかげで、まったく痛い思いをする事なく治療を終えた私は、今では毎日でも通いたいぐらい、歯医者大好き人間になってしまいました。
2008年12月13日
グレート・ボールズ・オブ・ファイヤー!


続けて音楽映画三連発目。
『グレート・ボールズ・オブ・ファイヤー!』('89・米)
破天荒なピアノ演奏、攻撃的なヴォーカル、過激なステージパフォーマンスで人気を博したロカビリースター、ジェリー・リー・ルイスの伝記映画。
エルヴィス・プレスリーが『キング』なら、この人は『キラー』!
サン・レコードを代表する、5大アーティストの一人です。
映画は、幼な妻(ナント13歳!)との結婚生活を中心に、彼の生い立ちからプロデビューまでの道のり、後に訪れる苦難など、ストーリー的にはサラリと描かれています。
やはり魅力はステージシーン。
観客に罵声を浴びせ、マイクを乱暴に扱い、椅子を投げつけ、挙句の果てに商売道具のピアノまで燃やしてしまう始末(笑)
しかも時は'50年代。ロックンロールが『悪魔の音楽』と非難されていたこの時代に、これだけクレイジーな事をやってのけたのは圧巻の一言。
また数々のヒット曲誕生の背景には、あらゆる音楽ジャンルのエッセンスが汲み取れます。
彼の音楽の礎となったカントリー、ピアノ弾き語りのきっかけをもたらしたブギウギ、荒々しい歌唱法は黒人音楽から。それら全てを上手く融合させ、自分の音楽を創り上げたジェリー・リー。
『ピアノじゃ売れない』と言われようと、スキャンダルの渦中に追い込まれようと、自分を信じ、決して信念を曲げなかった彼は、やはり『キラー』と呼ぶにふさわしい、ロック界のアンチヒーローなのかもしれません。

彼を演じているのは、デニス・クエイド。
スゴい!表情、仕草までそっくりです!
本編終了後、ジェリー・リー本人とデニス・クエイドとのパフォーマンス映像アリ(VHS版)。
こちら、本物のジェリー・リー・ルイス→
2008年12月13日
ラ・バンバ

『ラ・バンバ』('87・米)
メキシコ系アメリカ人ロック歌手、リッチー・ヴァレンスの伝記映画。
彼こそが、メキシコ民謡である『ラ・バンバ』という楽曲を、素早いギター奏法とエレキベースを取り入れる事により、ノリのいいロックテイストに仕上げた張本人!
現在、私達がTVやCM等で耳にするのも、ほとんどこのバージョンです。
しかも驚く事に、この曲は当時、レコードの“B面”用として収録されました。
メインのA面は、彼が当時付き合っていた恋人への想いを歌った『ドナ』。
デビュー曲『カモン・レッツ・ゴー』とともに大ヒットした、ロッカバラード。
今でこそ現役高校生の歌手デビューというのは珍しくないですが、弱冠17歳でヒットを飛ばした彼は、その先駆け的存在。
彼の独特のギターセンスは、幼い頃に慣れ親しんだメキシカンミュージックの影響でしょうか。その熱い演奏とは裏腹に、あどけない高音のボーカルがとてもキュートに感じられます。

この映画、リッチー役の俳優さん(ルー・ダイアモンド・フィリップス)が、本人とは似ても似つかないという声が聞こえてきそうですが、それよりもビックリだったのが、撮影時のアドバイザーとしてリッチーの家族が参加している事(笑)
リッチーの恋人、ドナ本人もメイキングのインタビューに顔を出しています。
彼の事を、『有名人になっても自分を見失わず、優しくて親切な人だった』と語る彼女。
ちなみに・・・『ストレイ・キャッツ』再結成前のブライアン・セッツァーが、エディ・コクラン役を演じています。彼の演奏シーン(『サマータイム・ブルース』)も、見所の一つ。
2008年12月03日
バディ・ホリー・ストーリー


で、今回選んだのがこちら→
『バディ・ホリー・ストーリー』('78・米)
いきなり日本未公開作品(笑)
エルヴィス・プレスリー以降に登場したロックスター、バディ・ホリー。
細身で長身、短髪に黒縁メガネがトレードマークの彼は、'50年代当時のロックスターとは全く違うスタイルと斬新なサウンドで、一躍全米トップアーティストの仲間入りを果たします。
黒人アーティストのメッカである「アポロシアター」に出演した初の白人アーティストであり、後に登場する名だたるロックアーティスト達に、多大な影響を与えた功績はとても大きいのですが、どうも日本での知名度がイマイチなのが悲しい

全米1位に輝いた『ザットル・ビー・ザ・デイ』や、『メイビー・ベイビー』は、映画『アメリカン・グラフィティ』でも使われていたし、同じく代表曲の『ペギー・スー』も、この曲をテーマにした映画『ペギー・スーの結婚』(フランシス・F・コッポラ監督、キャスリーン・ターナー、ニコラス・ケイジ主演)が作られています。
しかし、人気絶頂にあった1959年、思わぬ悲劇が彼を襲います。
主演のゲーリー・ビジーは、元フットボール選手だけあってマッチョな体型で、悪役という印象が強いですが、この作品でアカデミー賞にノミネートされただけあって、バディ・ホリーそっくり

伝記映画としてはもちろん、音楽映画としても充分楽しめる内容になっているので、バディホリーファン、ロック好きな方はもちろん、「ゲーリー・ビジー、懐かし~!」という方にも、オススメの1本です。
2008年09月22日
秋の夜長に・・・


舞台はニューヨーク。セントラルパークの紅葉が美しく、この時期にピッタリの恋愛映画です。
ズバリ、この映画のテーマは、「男女の友情は成立するか?」
主人公の男女は最初、「友人の彼氏」、「恋人の友人」という立場で出逢います。
「あなたは大勢の男友達の一人」と言う彼女に、彼は「男女の友情なんてありえない」とピシャリ!しまいにはケンカ別れしてしまいます。
5年後。二人は空港で偶然の再会。その頃には、彼女には恋人ができ、彼は結婚を間近に控えていた。
同じ飛行機に乗り合わせた事で、またしても「男女の友情」について言い合いをする二人。
さらに5年後。今度は本屋で再会。彼女は恋人と別れ、彼は離婚直前。フリーとなった二人は、「友達」として交流を深めていく。
お互いの事は何でも知っているし、相手には幸せになって欲しい。
恋人になってもおかしくない状況なのに、クリスマスや大晦日等の楽しいイベントでも、決して“いい雰囲気”にはならない二人。
この男女、「腐れ縁」なのか?それとも、実は「赤い糸」で結ばれているのか?
どちらにせよ、
『残りの人生、誰かと一緒に過ごしたいと思ったら、始めるのは早い方がいい』
あなたは、「男女の友情」って成立すると思いますか?