2009年05月13日
短いめぐり合わせ
『逢いびき』('45・英)
デヴィッド・リーン監督作品というと、『アラビアのロレンス』や『戦場にかける橋』、『ドクトル・ジバゴ』等の歴史大作を思い浮かべる人が多いと思いますが、一方で、『旅情』や『ライアンの娘』、『逢いびき』等の恋愛ドラマもとても素晴らしく、格調高い仕上がりになっています。
『逢いびき』は、平凡な日常に暮らす人妻ローラと、医師アレックスとの禁断の恋を描いたメロドラマ。
原作は、ノエル・カワードの戯曲『Still Life(動かない生活)』。名カメラマン、ロバート・クラスカーの陰影際立つ撮影に、音楽はラフマニノフの傑作『ピアノ協奏曲第2番』。全編、これ1曲だけで通しています。
主婦のローラは毎週木曜日、近所のミルフォードの町へと買い物に出かけます。帰りがけに駅構内のカフェでひと休みしていると、そこへ医師のアレックスが入って来る。その出会いがもとで、二人は毎週短い逢瀬を重ねていく。映画を観たり、食事をしたり、散歩をしたり。互いに家庭があり、これまでずっと家族に対して何の不満もなかった二人の生活に、ほんの一瞬小波が立つ。徐々に気持ちの昂ぶりを隠せなくなっていく二人。だが、ささやかな幸せは、長くは続かなかった・・・。
ローラ役のシリア・ジョンスンと、アレックス役のトレヴァー・ハワードは、どちらも地味ながら品のある役者さんで、このイイ意味での“地味さ”が、物語をリアルな感じに仕上げてくれていると思います。
リーン監督の大作は、臨場感が売りですが、このようなメロドラマも、なんだか現実に存在する恋人たちの日常を覗き見たような気持ちになる“臨場感”を与えてくれている気がします。
Posted by つきピン at 23:49
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